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社会起業家の定義が変わる! [社会起業家]

3月16日のブログで、2月25日に開催された「ソーシャルビジネス2018」の話題を紹介しましたが、この時の田坂広志さんの基調講演の内容が、歴史に残るほどの名スピーチだったとぼくは感じたので、そのご紹介もしておきたいと思います。

テーマは「日本型社会起業家とは何か」。なのですが、壇上の田坂さんが力強く語ったのは、社会起業家の定義を変えるときがきた、ということでした。

その内容を要約するとこんな感じです。

●「社会起業家」とは海外から渡ってきた概念ではあるものの、その本質は、もともと日本人が大切にしてきた考え方だった。

●現状、社会起業家というとNPOやNGOとイコールのイメージを持つ人が多く、またボランティアで行うものであるように思われている。またその事業分野も、環境や福祉、教育分野に事業にかかわることと同義と思われている。だが、組織形態や事業分野を限定することに意味はない。

●もともと日本の企業には、業を通じて社会に貢献するという考え方が根付いていた。どんな事業分野だろうと、どんな組織形態だろうと、日本人の就労観、企業理念には、社会貢献の要素がその根本にあった。

●ところが欧米では、利潤の追求を企業の目的としているために、その対抗軸としての「非営利」が成り立つ。そこで社会起業家という概念が生まれてきた。

●日本がそれに学ぶ必要はなく、むしろ本業を社会貢献と位置付けてきた日本の労働観、思想、文化はこれからの世界のモデルになるべき存在である。

と、おおむねそういう内容でした。

おそらく田坂先生がもっとも言いたかったのは、「自分が今、どんな仕事をしていようと、どんな会社にいようと、社会のために貢献しようという気持ちを持って働いている人はみな社会起業家である」ということでしょう。

田坂先生は以前から一貫して、日本の国民全員が社会起業家になる時代が来るとおっしゃってますが、そのお考えはまったくブレることなく、いよいよそちらへシフトするときが来たと宣言されたわけです。

昨今、日本の名だたる企業が続々と不祥事を起こしていますが、なぜこんなことになったのか。その原因は現在の情勢を分析すればいろいろあると思いますが、その根本には日本に欧米型の行き過ぎた資本主義が広がってきたことに起因しているのではないか。再び、日本人経営者が大切にしてきた働く意味、事業に込めた理念に立ち返るべきだと。

その文脈からみれば、日本という国で社会起業家と呼ばれている人たちのことを、特別な人のように扱うより、むしろ彼らこそが日本の企業のスタンダードと考えるべきではないかということなんです。

こうして聞くと、理想論とも感じるかもしれません。でも、この考え方はとても重要です。今、CSR(企業の社会的責任)を各企業で競うように進めていますが、そもそも社会的な責任というのはすべての企業が負っているものです。

社会的責任と社会貢献は分離するものではなく、本来が社会貢献に結び付いているのだという日本企業の本来の立ち位置に戻れば、社会起業家は特別な存在ではなくなることになります。

ここ数年、まさにぼくはこの定義について迷っていて、次のステップを踏み出しあぐねていたところだったので、まさにそのタイミングでのこのお話には、とても感銘を受けました。

これまで社会起業家を説明するときに必ず「営利を目的にしない」という文言が入るわけですが、それは必ずしも社会起業家の条件ではないということは、僕も常々、いろんなところで書いたり、話したりしてきたことです。

世間的に社会起業家と言えばNPOやNGO、ボランティアと意味合いが一体化しているため、お金を儲けるという発想が間違っているかのような印象です。

しかしそうではないのです。社会起業家も他の起業家と同じで、仕事でしっかりと利益を出すべきだし、むしろ利益のないところには社会貢献もない。社会の役に立っていれば、利益は自然に出るはずなのです。

以前、社会起業家の取材を進めていくうちに、一つの疑問にぶつかったことがあります。それは社会起業家の始める事業は、その事業がなくなることがゴールだったことです。

社会課題を解決するのが社会起業家の仕事だから、課題が解決した暁には事業が不要となるという論理です。でも、そこのところが僕にはなんとなく納得できていなかったというか、腑に落ちていませんでした。

社会にとって必要な事業は、どんどん広がり、規模的に成長していくべきものだし、一度ひとつのサービスが生まれたら、それを前提とした社会が形成されることになるはずだからです。だから、社会起業家の起こす事業も発展させていくべきものだというなら、とても話が簡単になります。

ただしここで重要なのは、事業で得た利益に対する考え方です。

そのことについて田坂さんの答えは明快。「利益は、さらなる社会貢献をせよという天の声である」と常々語っています。

といっても別に儲けたお金で贅沢すんなよ、ということではありません。社会起業家であってもフェラーリに乗ろうが、高級リゾートで豪遊しようが別にいいわけです(と言いつつ、ぼくはそういう人のことはおそらく好きになれないと思いますが)。

しかし、それを目的に事業を起こす人は、日本的な考え方にはそぐわないというか、起業の動機として間違っているので、成功しづらいのではないかと思います。やはり利益が出たらさらなる社会貢献の事業をつくるというのが実業家の本道でしょう。

そう考えれば、社会起業家はふつうの起業家となんら変わらない。むしろその方が、経済の発展と国民の幸福度が上がることが同時にかなっていく道筋が見えてきます。

社会起業家の定義が変わる。このタイミングで、僕もそろそろ新しい事業モデルに着目していきたいと思います。

新しい社会起業モデルとは何か。それは、わかりやすく本業を通じてしっかり社会貢献を実現しながら利益を上げ、さらに新しい社会貢献事業を作っている企業の事例ということになります。これから少しずつ取材を始めていきたいと思います。


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