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「高級ビールで日本を変える」(ぴあ) [本]

将来起業したい若者がいたとして、その人が、たとえばビールを作りたいと思ったとします。もちろんビールづくりなど経験したことはありません。なのにある日突然、そう思ったのです。

でも日本でアルコール商品を扱うには相応の資格や認可が必要です。無許可でやると逮捕されます。その問題をクリアするだけでも手間がかかりそうですよね。もちろんビールの造り方など知りませんから、一から学ぶ必要もあります。さらにオリジナル性がなければ自分で造る意味がありませんから、自分たちが理想とするビールはどんなものなのかと考え、理想に近づけるための試行錯誤の日々も続くでしょう。

なんとか理想の商品ができたとして、はたして売れるのか。熱烈に消費者に支持されるもの、つまり売れるものにするには相当のハードルがあることは、動き出す前から明らかです。日本のビール市場は大手4社がほぼ独占しています。一般の小売店で棚を空けてもらえる可能性は少なそうです。

このように頭の中で冷静に商品化のプロセスを想像すると、ほとんどの人が「ハードルが高すぎるからやめよう」となります。

ところがその難題に挑み、ハードルを越えるために知恵を絞って見事に成功させた人たちがいました。メゾンロココという会社を設立した3人の若者たちです。代表の若林洋平さんは中学時代から大学までアメリカで教育を受けた人で、英語のほうが堪能という人。世界的な消費財メーカーに勤務しブランドマネジメントに携わっていました。あとの2人はニューヨークのウォール街にある投資会社で働いていた金融エリートたち。1人はアメリカ人、もう1人はカナダ人です。

国籍の違う3人が、東京のファインダイニングに貢献したいと、高級ビールづくりに挑んだのでした。一流レストランを利用する人たちは、シャンパンやワインが好きな人たちです。その大半がビールを苦手とするとも言われます。彼らのビールづくりで特筆すべきは、ビール好きのためのビールではなく、ビールが嫌いな層に好まれるビールを作ろうとしたことでした。

ビールをつくるだけでもハードルが高いのに、ビールが嫌いな人や苦手な人に向けたビールを作るなんて正気の沙汰とは思えません。それでも彼らは果敢にチャレンジしたのです。

そして2年前、突如として東京のファインダイニングに高級ビールが登場し、グルメ界に衝撃を与えました。それが「ROCOCO Tokyo WHITE」です。なんと1杯2000円前後という価格で提供されています。

発売当初、関係者の間には「1杯2000円のビールなんて誰が飲むの?」と揶揄する声も聞かれたようですが、そんな予想を覆し、世界でトップと言われるレストンのシェフやソムリエがそのコンセプトと味を絶賛。発売からわずか1年で100店以上の星付きレストランが取扱いを決めたのでした。

今では、日本全国はもとより海外の一流レストランからの問い合わせも連日のように、若林さんのもとに入ってきています。

そんなアメリカンドリームのようなビールの開発物語を1冊の本にしたいと、「ぴあ」のグルメ系コンテンツの“総支配人”、大木編集長から連絡をいただいたのは今年4月のこと。その本がこの年末ぎりぎりに完成しました。

『高級ビールで日本を変える』(ぴあ)。
著者は、メゾンロココ代表・若林洋平さん。

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いったい彼らは何をきっかけにROCOCO Tokyo WHITEを開発したのか。なぜ一流シェフやソムリエを納得させ、絶賛されるまでになったのか。その開発ストーリーが若林さんによって詳細に記されています。

開発物語と言いながら、マーケティングやブランディングの教科書と言ってもいいくらい濃い内容です。将来、起業したい人で、なおかつハイエンドな商品づくりを目指す人には、学ぶところの多いケーススタディ本といっていいでしょう。

この本をつくるにあたっては、取材から打合せまでのほとんどがリモートで行われました。著者と一度も会うことなく完成した本は、私にとって人生初です。そういう意味でも、思い出に残る1冊になりました。

都内主要書店とアマゾンで取扱っているとのことで、冬休みの間にもご一読いただけると幸いです。今年は我慢の年だっただけに、来年あたりは高いハードルにチャレンジしたいとウズウズしている人も多いことでしょう。そんな人に読んでもらえば意欲も10倍に増すに違いありません。

いよいよ今年もあと3日。今日から大掃除開始です!


七々三





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