SSブログ

TPPの行方 [農業]

4月27日(日)

日米TPP交渉は、予想通り、オバマ大統領が訪日しても、大筋合意にいたらぬまま協議継続となりました。

私はかねてから、TPP参加に賛成してきましたし、日本が参加を決めた時から、いずれ担当政権は重大な決断を迫られることになると思っていましたが、やはりその通りになっているようです。

TPPは関税撤廃が原則であり、日本の農産品を(関税で)「守る」という発想は通用しないのは最初からわかっていたこと。「守り」たいなら、参加しなければいいわけですから、かたくなに「守る」ことに執着していれば、なぜ日本は参加したんだ?ということになります。

甘利大臣には相当過酷で高度な交渉が必要とされるだろうと思っていましたが……経過を見るにつけ、この人はあまり(シャレです)よくわかっていないんじゃないか? と思われる発言が聞かれるようになりましたね。この人、「守る」ことが正義だと勘違いしているのではないかと感じてしまうのです。

オバマ大統領は、米国の財政回復を、自国製品の輸出によってめざすことを、経済政策の根幹にしているのですから、TPPに関しては日本側に一切の妥協をするつもりもないでしょう。というより、日本がTPPに参加したからこそ、アメリカもTPPを重視するようになったというのが正しいのかもしれません。

日米共同声明でオバマ大統領は、尖閣諸島が日本の領土であることを認めたうえで、防衛に協力すると公式に宣言しましたが、これがオバマ大統領のTPP打開に向けた最終カードでしょう。米側がカードを切った以上、あとは日本側が折れるのを待つだけ、ということで、よほどのことがない限り、日本の農産物5品目は「守れない」内容でしか決着はあり得ない。

しかしカッコつきの「守る」ということを考えてみる必要があります。政権が守ろうとしているのは、「票」であって日本の農業ではない。日本の農業を本当に守るなら、ここで大きな決断をし、国際競争の中に身を置くしか、ないと私は思います。関税にこだわり、もしもTPPの枠組みから外れるというような論調が出始めたら、日本は農業どころか、一国の経済をも守れなくなるでしょう。

政府が「守り」過ぎてきた日本の農業は、もはや自分で立って歩くための筋力を失い、弱体化してしまいました。若者たちの中から優秀な農業の担い手を作るためにも、一人で立てる産業に変えなければ未来はないと私は思っています。農業に経営の観点を取り入れ、若者たちの職業選択の有力候補になるほどの収益性を追求していくほかないのではないでしょうか。

すでに日本の農業を変えようと立ち上がる若者は少なくありません。国際競争に勝てる農業をめざして起業する人もたくさん登場しています。私は4年前、新しいスタイルで日本の農業の革新をめざす起業家を取材して『農業を起業する!』(アスペクト)という本にまとめました。日本の農業に何が足りないのか、何を目指すべきなのか。それは、彼らのチャレンジする姿を追えば、自ずと見えてきます。

日本の農業を強くするには、国際競争に身をさらすしか、もはやないでしょう。政府がめざす農業の6次産業化は、産業としての正しい競争の中でこそ可能になるだろうと私は思います。安倍政権は、いよいよ日本の農業と票の関係を変える決断をせざるを得ないはず。痛みを覚悟して決断にいたるのか。協議の行方に注目です。

農業を起業する

農業を起業する

  • 作者: 大島 七々三
  • 出版社/メーカー: アスペクト
  • 発売日: 2010/05/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。