８月をしめくくる寂しい出来事

今日は８月最後の日だな、と思いながら、筆を洗っていたら、
なんと、毛がボロボロと抜け落ちて、最後はごそっと毛の部分が
取れてしまった。
気に入っていた筆だったから、残念でしかたがない。

それにしても、毛のかたまりが指にからまり、
それが洗面所の排水溝に流れいていく様は、
不吉な感じだった。

もしもこれが自分の頭髪だったら、かなりショックなことにちがいない。
と想像してしまったのは、この８月、母ががんの手術を受けたからだろう。
もうすぐ抗がん剤の治療が始まることになっている。

抗がん剤と聞いて、母がもっとも嫌がった副作用は、
吐き気でもめまいでもなく、髪の毛が抜けることだった。

どうせすぐまた生えるから、心配しないで大丈夫だよと
慰めてきたけれど、
今日の筆のような感触で頭髪が抜け落ちたなら、
理由がわかっていても、ショックなことに違いない。

母の心の痛みを少し理解できたような気がする。

まだ買って１年半ほどしかたっていない筆だったけど、
初等科の師範試験にチャレンジしたパートナーだったから、
もう少し一緒にいたかった。

これが８月を最後に締めくくるエピソードというのは、
ちょっと寂しい心持がします。


七々三