自分再発見のとき

何がきっかけで購入したのか。一人の時間が多くなって、長年手にすることのなかった本を本棚の中から見つけた。

「答えはすでにあなたの心の中にある」（ロビン・シャーマ著）というスピリチュアル系の本。

ぱらぱらとめくると、はじめのほうに「人生の中で大きな苦難や孤独を味わう経験ができることは素晴らしいことだ」とある。ほぉー。

理由は、逆境の時こそ、人は深く考えるからだそう。

たしかに、調子よくものごとが運んでいる時には、あまり深い思考に入ったりしない。なんとなく浮かれて、世界はとても住み心地のよい場所のように思えてくるもの。

だが、大事なものを失ったり、仕事で予想もしないほど低い評価を受けたようなとき、私たちは懸命に考える。自分の何が悪かったのか、どこで間違ったのか、何を改善すればいいのかと。

その反省の中で、哲学的な思考に入る。やがて自分の真の姿に、少し気づく。

先日あるプロ野球選手が、「負けたゲームから学ぶことは何もない。だから勝ちたい」と言っていたけど、私は少し首をひねってしまった。一昔前のある名監督が真逆のことを言っていたからだ。負け試合にこそ強くなるヒントが豊富に隠されていると。連戦連勝の時に反省は難しいものだ。

私自身、かれこれ何十年も思いが及ぶことのなかった意識の領域に入ることが多くなった。

これはきっと自分の姿を確かめる作業。自分再発見のときなのだろう。


七々三