先日、書道の師、武田双龍先生からはっとする言葉を聞きました。

それは「美は意識で身につける」ということ。裏を返せば、「美は努力では身につかない」ことを意味しています。

美しい文字を書きたいからと、お手本を何度書き写しても、自分の感覚で書くだけだから、美しくはならないというのです。

美を身につけるには、日頃からバランス、形、大きさを意識する。それででしか、身につかないとのことでした。

先生がよくいうのは、お手本のコピーをいくら繰り返しても、美は身につかないと言うこと。お手本がなくなったら、最初に筆を置いたその場所からすでに間違っているのがふつう。

そして多くの人が線を長く伸ばしたいところは、伸ばさないほうが美しくなり、大きくしたいところは、小さくしたほうが美しい、というほどに、ふつうの感覚では美から遠ざかってしまうとのこと。

つまり、美しい文字は、これまで書いてきた字の延長線では書けないんですね。

まるで取りつく島のない気持になってしまいますが、じつはこれ、日常のさまざまなことに共通していることのような気がします。

洋服でオシャレをしようと、上から下まで雑誌モデルと同じものを着ても、かっこよくならないのと同じ。

大切なことは努力ではなく、日ごろからバランスや形を意識すること。

ムダな努力はかえって美から離れていくという逆説。

あらゆる上達の極意だなと思って有難くうかがいました。


七々三
だから大して上達しなかったのかと、9年たって気づいた私。